リファラルマーケティングという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
リファラル採用ならば就活で聞いたことがあっても、マーケティングとなるとまだ馴染みが薄いのではないでしょうか。
今回は、リファラルマーケティングについて、マーケティング手法の歴史から、リファラルマーケティングに関連するマーケティング手法まで詳しく解説していきます。
リファラルマーケティングの基本は「口コミ」
リファラルマーケティングとは紹介型マーケティングとも言いますが、要するに口コミを利用したマーケティング手法です。
もちろん、口コミによる情報の伝播は古くからあるものですが、近年のソーシャルメディアの普及によって、より口コミによるマーケティング活動の重要性は高くなっています。
マーケティングの歴史
リファラルマーケティングをより深く理解するために、まずは過去にどのようなマーケティング活動が行われていたのかを確認しておきましょう。マーケティングの方法は大きく3段階に分けて発展してきたと言われています。
まず、一段階が現在でもマーケティング活動の主翼を担うマス・マーケティングです。マス・マーケティングとはテレビCMや新聞、雑誌などを用いてターゲットやセグメントを固定しないマーケティング活動で、消費者の属性や価値観が多様ではなかった大量生産・大量消費時代によく用いられていたマーケティング手法です。この手法では商品の魅力を広く認知してもらう、いわばプロダクトアウト型の広報活動が有効なマーケティング戦略でした。
次に第二段階です。製品市場が飽和するにつれて消費者の需要を中心としたマーケティング手法がとられるようになりました。プロダクトアウト型からマーケットイン型のマーケティングへの変遷です。この頃になると、消費者をセグメンテーションしたり自社のポジショニングを設定したりと近代型のマーケティングが行われるようになりました。
しかし、現代ではさらに人々の価値観や生活行動が多様になり、画一的なマーケティングも難しくなっています。そこで、第三段階として、あらたにとられるようになったマーケティング手法が、リファラルマーケティングです。
SNSの普及とリファラルマーケティングの関係
リファラルマーケティングは、商品の宣伝活動を企業が積極的に行わないということが大きな特徴です。あくまで宣伝活動の主体は消費者です。企業は消費者へ、知人に紹介したくなる、なんらかの「価値」を提供することが前提となります。
しかし、このような消費者主体の宣伝活動を企業が仕掛けることができるようになったのは、ソーシャルメディアつまりSNSの普及があってこそです。
どのような経路で自社の商品が認知されるのか、どの程度の認知を得られたのか、SNSの普及によって定量的に計測可能になったことにより、口コミを利用したマーケティング戦略が実現可能となったのです。
リファラルマーケティングの手法
リファラルマーケティングという言葉は紹介をベースとしたマーケティングという意味でしかなく、その手法あるいは派生として多くのマーケティング用語が使われています。
1バズマーケティング
「バズ」は無視がうるさく飛び回る様子を表す英単語で、いわゆる「バズる」の語源です。バズ・マーケティングは影響力のある一部の消費者を発信源としたり、話題性のあるイベントを開催したりと、つい人へ話したくなる仕掛けを駆使して、口コミの拡散を狙うマーケティング手法です。
2バイラルマーケティング
バイラルマーケティングは、バズマーケティングと同じ意味で使われます。バイラルは英語で「viral」と表記され「ウィルス性の」という意味を示します。つまり、バイラルマーケティングとは、情報が人から人へ口伝いに広がる様子を、指数関数的に感染者を増やすウィルスに模して表現したものです。
3コミュニティマーケティング
ある商品が魅力的であれば、自然発生的に商品の愛好家グループなどのコミュニティが発生することも少なくありません。そこに目をつけて、自然発生した消費者のコミュニティを企業がサポートしたり、企業主体でコミュニティを作り消費者の参加を促すなどの方法で、企業とコミュニティが一体となり商品やサービスを作っていくというマーケティング手法です。
4インフルエンサーマーケティング
SNSで非常に多くのフォロワーを持ち、強い発信力を持つ人をインフルエンサーと呼びます。そのインフルエンサーの発言を利用してフォロワーへ訴求するマーケティング手法です。インフルエンサーとそのフォロワーはある特定の価値観を共有してつながっているため、ターゲットを特定して仕掛けやすい戦略です。しかし、一方で企業とインフルエンサーの関係があまりにも露骨な場合には、商業的としてフォロワーへ訴求できないといった側面もあります。
リファラルマーケティングのメリット
リファラルマーケティングのメリットはコストの低さと、瞬間的な情報拡散力にあります。
一般的に、企業は口コミのネタになりやすい情報または人に紹介したくなる仕組みを用意するだけで、莫大な宣伝広告費などを必要としません。たしかに、昨今は、リファラルマーケティングを狙った販促を委託するためにある程度の予算は必要となっています。しかし、従来のようなマス・マーケティングに比べればまだ低価格です。
そのような低コスの仕掛けであるにかかわらず、リファラルマーケティングが適切にヒットすると、その口コミによる情報伝播はまさに感染症のごとく爆発的なスピードになります。
リファラルマーケティングのデメリット
低コストで指数関数的な認知が狙えるリファラルマーケティングですが、一方でその情報伝播をコントロールできないというデメリットがあります。
したがって、企業側には、リファラルマーケティングを狙って仕掛けた情報発信が本来の意図とは異なるように情報が受け取られ、結果としてマイナスイメージが爆発的に広まるリスクがあります。
また、消費者の情報リテラシーが高まったことにより、企業側の意図を隠したマーケティング活動が見破られ、ステルスマーケティングとしての悪評を立てられるリスクもあります。いずれにしろ、リファラルマーケティングでは、情報に関するリスクマネジメントも併せて検討する必要があります。
マーケティングと広告の違い
ここまでは、マーケティングについて明確な言葉の定義をせずにご説明してきました。しかし、広告業界あるいはPR業界への就職を考えている方はマーケティングと広告を同列に考えるようなことはしないほうが良いでしょう。
マーケティングとは、ある商品が売れる仕組みを作ることを差します。それは広告宣伝に限らず、売れる商品を作るということや、売れる商品とはなにかという調査までを含む、広い概念です。
一方で、広告は「広く告げる」と書くように、仕組みを作るのではなく商品を認知させることが主な活動になります。したがって、広告はマーケティング活動の中のひとつということです。
リファラルマーケティングの事例
1スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーのリファラルマーケティングは日本国内でも非常に有名です。
スターバックスコーヒーは、ドリンクを買った消費者がドリンクとともに写っている写真に特定のハッシュタグをつけてSNSで発信すると、抽選でドリンク引換券が当選するというキャンペーンを行いました。
スターバックスコーヒーのドリンクはカラフルでSNSなどでの発信に適しているため、このキャンペーンはまたたく間に消費者から消費者へと伝わり、爆発的な広まりを見せました。
2Uber
Uberは、自動車を所有している人が、空き時間を利用して自家用車へ他人を相乗りさせるサービスです。Uberは日本でもサービスを展開していますが、まだそれほど普及していません。名も知らぬ人同士でいきなり車に乗せるのも、乗るのも不安を覚えるのは当然です。
しかし、Uberはこれを逆手にとってサービスを利用した乗客またはドライバーがお互いに評価をして知人に紹介することで紹介料が発生するという仕組みを作りました。そして、紹介料目当てに安心して利用できるという口コミが広がり、またたく間にUberのシェアは拡大していきました。
以上、リファラルマーケティングの事例を2つご紹介しました。なぜ、スターバックスコーヒーは日本で成功し、Uberのマーケティングは日本では成功しているとは言い難い状況なのか、調べてみると面白いかもしれません。
まとめ
リファラルマーケティングは、口コミを利用したマーケティング手法です。その背景にはソーシャルメディアの普及があります。
広告やPR業界などで活躍したい人は必ずおさえておくべき考え方なので、自分の周りでどのようなリファラルマーケティングが仕掛けられているか注意深く観察してみてはいかがでしょうか。
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