成塚雅樹(なりづかまさき)
PCを使ったグラフィックスの制作への興味から、地元仙台の宮城大学事業構想学部価値創造デザイン学類へ入学。大学ではウェブデザイン、メディアアート、プロダクト、グラフィックデザインなど幅広いデザイン分野を学び、名だたる企業のインターンで複数回の優勝経験を持つ。
2/26ツイッターにこんな投稿が流れていた。2020年DeNAのデザイナー内定者第1号だという。
DeNAから内定もらった〜!!
今年のデザイナー内定者、第1号らしい!! pic.twitter.com/RINyZs2xKb— ナリヅカ (@narizuka_work) 2019年2月26日
昨年、「超一流の3留」という肩書きを持つDeNAビジネス職2019年内定者の磯貝さんへのインタビュー記事が大きく話題を集めたが、今年も楽しみな内定者が現れた。
しかも彼は仙台出身で、学生のデザイナーとしてはあまり聞き馴染みのない「宮城大学」だという。
パッと就活といえば東大や早慶を思い浮かべるが、彼の話を聞いていると、地域の差は実は関係なく、地方の大学にもまだまだ未開拓のポテンシャル人材が眠っていると可能性さえ感じられた。
尊敬する人を集めた夢のチームを作りたい
芳本
成塚さんはサークルのような形でクリエイティブチームを結成されたとお聞きしましたが、もともと仙台にはそういった学生団体というものはなかったのでしょうか?
成塚
クリエイティブ団体は意外と多くあります。ですが自分は元からある団体に所属するのではなく、一からメンバー集めをして、理想のチームを作りたいと思いました。
芳本
理想のチームとは??
成塚
僕が尊敬する人を集めたチームです。エンジニアや経営で優秀な人が周りに多くいたのですが、その人達は個人で活動している人が多くて。その人たちを巻き込んで一つのチームとして活動したらもっと面白いことができるんじゃないかと。
芳本
なるほど。ドリームチームですね!特にデザイナーやエンジニアの方には1人で活動されている方が多そうですよね。
成塚
はい。ただ最近はデザイナーやエンジニアが集まる場所や機会は増えてますよね。でも、大阪や東京が中心で、地方は活動の場は少ないですね。
芳本
そうですよね。チームの立ち上げの際に大変だったことはありますか?
成塚
周りのクリエイターをいかに巻き込むかが大変でした。。最初に声をかけたメンバーは本当に優秀だったのでチームに入らずとも一人で全てこなせちゃうんですよね。なので、チームに所属するメリットをしっかり伝えて納得してもらうのにかなり時間を要しました。
芳本
最初はみんな乗り気ではなかったんですね。どうやってメンバーに引き入れていったのですか?
成塚
アンケートを書いてもらったり、1対1で話を聞いたりして彼らのチームへの欲求を探っていきました。そこからみんなにとっての「チームの意味」を明確にしていきました。
チームの目標は「サードプレイス」
芳本
なるほど。チーム作りに慣れているような印象を受けるのですが、過去にそのような経験はあったのですか?
成塚
そうですね。高校時代に40人規模のテニス部の部長をしていて、チーム作りには高校時代から関心がありました。チーム作りでつまづいたら、その度に本やwebで知識を取り入れていました。
芳本
やはりノウハウがあるんですね。ただ人が集まっただけではチームにはならないですもんね。とくにクリエイターは活動内容への共感ってめちゃくちゃ重要ですよね。
成塚
そうですね。それで、「クリエイターのサードプレイスをつくる」というコンセプトで生まれたのが今の.MoVというサークルです。
芳本
それにしてもいいコンセプトですね。学校でも職場でも自宅でもなく気兼ねなく集まれる仲間がいる場所ですね。
成塚
はい!クリエイターたちが集まって、みんなが創造力を高めて行けるような場所や機会を作ることは需要があると考えたので。
芳本
どんなことから始めましたか??
成塚
最初は、チームとしての団結力を上げるために一つの課題にチーム全体で取り組むべきと考えて、受託開発をしていました。
芳本
そうなんですね。お仕事はどのように獲得していったのでしょうか。
成塚
宮城大学に映像会社で働いている教授がいて、その紹介でお仕事をもらったり。あとは、僕たちの活動を知った地元の団体がCM製作やイベントのオープニング映像の製作を依頼してくれたりとかですかね。
芳本
紹介で実績を出して口コミが広がったんですね。
成塚
それで報酬を頂いて作業環境を整えて、さらにチームを改善して…という繰り返しでした。
アートではない、伝えるためのデザイン
成塚
学校からも活動を推奨してもらったので、そのおかげもあって認知度が高まっていきました。
芳本
しっかり情報発信して学校や企業も巻き込んで行ったんですね!
芳本
ちょうど大学の話が出たのでお聞きしたいのですが、ぶっちゃけ、美大や芸大ではなく宮城大学を選んだ理由はなんだったのでしょうか。
成塚
もともとアート寄りのデザインがしたかったわけではないんです。それよりも「伝えるためのデザイン」が学びたかったというのが大きいと思います。
芳本
なるほど。
成塚
なので大学でもデザイン情報学科に所属して、商業デザインをメインで学びましたね。いわゆるアートではなく、受け手となる使用ユーザーを意識したプロダクトを作る事に特化してデザインを学んできました。だから、宮城大学の事業構想学部を選んだという感じです。
芳本
そうなんですね。その大学で「伝えるためのデザイン」が学べるということは、高校時代から知っていたのですか?
成塚
はい。色々と大学を調べていく中で宮城大学の事業構想学部を見つけて「もうここしかない」っていう気持ちで。しかも地元だったので余計に志望度が高まりました。
芳本
なるほど…成塚さんが学びたかったデザインは関東にはなかったのですか?
成塚
事業構想学部の中にデザイン系の学科がある大学はなかなかないですね。デザイン以外にもプログラミングやマネジメント、ビジネスモデルなどについて幅広く学ぶこともできました。カリキュラムもビジネスとデザインとITを合わせた今の時代に則した先進的な内容も多かったです。
地方出身者における就活の戦い方
芳本
ゼミではどのようなことを勉強しましたか?
成塚
ビジュアルデザインについて幅広く学んでいます。
芳本
やっぱりそういう学生さんたちは都内のITベンチャーを受けている人が多かったですか?
成塚
もともとそんなに多くなかったです。最初は興味が無かった友達も一緒にインターンに誘って参加をしているうちにその企業に入ることを決めたり、最近はITベンチャーを目指す学生は増えてきていると思います。
芳本
なるほど。ところで地方にいる時って、就職活動における情報格差があるとよく言われますが、そのような格差は実際に感じましたか?
成塚
かなり感じましたね。イベントも仙台で行われることは少ないですし、企業の方もなかなか来られないですし。だからこそ自分から機会を取りに行かないといけないという気持ちは強かったですね。
芳本
やっぱり地方出身者の就活では足を運ぶことが重要なのでしょうか?
成塚
そうですね。足を運ぶのはもちろんです。加えてSNSの活用も大切です。Facebookで同じ業界の人と繋がっておくとその業界に関するイベントや情報が知れるので。あとは積極的に自分の活動や参加イベントの結果を投稿することで仕事をいただけることもありました。そのままMessengerで連絡を取り合うこともできますし。
芳本
成塚さんくらいの年代の方はあまりFacebookを使わないと思っているのですが…TwitterじゃなくてFacebookをあえて選んだ理由はありますか?
成塚
そうですね。やっぱりFacebookだと自分より年齢層が高い人がたくさんいるのでtwitterよりも仕事がもらいやすかったですね。自分より年上の方や社会人と繋がるならFacebookが良いと思います。
芳本
FacebookはビジネスSNSというイメージですね。
成塚
そうですね。
芳本
Facebookは最近ビジネスに寄ってきているというか。昔はプライベートの事を投稿していましたが、最近はお仕事の内容を投稿するイメージになっていますよね。
成塚
InstagramやTwitterが出てきたのでプライベートはそっちで、Facebookはビジネスという捉え方になってきていますね。
圧倒的なスピードで仕事を進める
芳本
SNSで見ましたがインターンで優勝しまくってましたね!インターンの情報はどこで探されていたんですか?
成塚
弟からサイバーエージェントの存在を教えてもらって、「受けてみれば?」と言われ試しに受けてみたのがインターンに参加したきっかけです。
芳本
弟さんからの口コミなんですね!実際に参加された時の感触はどうでした?
成塚
美大・芸大出身の学生が多かったので、最初は美大生達と対等に戦っていけるのか不安でした。
芳本
なるほど。
成塚
地方出身で大学も知名度がそこまで高くない。だから「ちゃんとデザインができるのか?」といった見方もされていたかもしれません。僕自身も自信があまりなかったですし、美大出身の周りの学生と比べるとアウトプットに大きく差が出るんじゃないかと。
芳本
確かに不安なところはありますよね。
成塚
その不安もあって、インターンの2週間は、ホテルに缶詰になって誰よりも手を動かそうと張り切っていました。朝食を食べながら横にPCを置いて作業するくらい、熱中していました(笑)
芳本
不安と負けず嫌いな性格が突き動かしたんですね。結果的にはどうでしたか?
成塚
最終的な結果は嬉しいことに最優秀賞を頂けました。その時にすごい自信を持てましたね。地方の一般の大学でも美大出身とか関係なく戦えるんだって。
芳本
なるほど。周囲の学生のアウトプットと差がついたと感じたのは具体的にはどのような部分だったのでしょうか?
成塚
アウトプットの量や作りこみに差がついたと思っています。最低限の提出物としてはアプリのアイコンやUI画面三つ、コンセプトを含んだプレゼンボードの提出だったのですが、僕はアプリのプロトタイプまで作りこみ、発表時に実演して見せたのが良かったのかもしれません。
芳本
やはり仕事のスピードが速いというのは、もともと仕事を受託していたことや納期を意識する環境だったことが大きいですか?
成塚
それも1つの要因だと思いますね。絶対守らなくちゃいけない納期があって、それに向かって全力でクオリティを上げていくというのをやっていたので。
芳本
普段から当たり前のようにやっていた業務をそのまま出し切ったって感じですよね。
成塚
ですが、美大生が作る奇麗なグラフィックや繊細な美的センスは僕には無いので、本当に尊敬するところばかりです。美大生のプレゼンを初めて目にしたときは感動しましたね。
自己分析結果と企業の照らし合わせ
芳本
DeNAのインターンではどのようなことをされたのですか?
成塚
二週間のインターンシップだったのですが、課題内容が「あるテーマに対して課題解決をするサービスを考えてくれ」という結構、抽象的なテーマで。
芳本
それでどんなアプリを作ったのですか?
成塚
子育てをする方たちのための情報共有アプリを作りました。地図アプリでオムツ替えスペースや授乳室、離乳食持ち込み可能な場所など子育てに必要な育児施設を直ぐに探せるもので。
芳本
それで何を解決しようとしたのですか?
成塚
地域情報アプリになるので、地域の衰退していくコミュニケーションがCGM(消費者生成メディア)で復活させられると考えたんです。
芳本
なるほど。アイデアを形にするのににどれくらいかかりましたか?
成塚
他の会社のインターンだと1日目からビジュアルデザインに入るのですが、DeNAはコンセプト設計で1週間かけました。そこにDeNAの本質を大切にするというモノづくりの精神が反映されており、魅力に感じた一つでもあります。
芳本
ビジュアルから入ってしまうと、後から「やっぱり違うな」っていうこともありますもんね。
成塚
あと、インターンで現場の社員の方と話す機会を一番多く設けてくれたのもDeNAでしたね。現場以外でも、食事会やカジュアル面談などの機会もたくさん与えてくれました。そこからかなりDeNAを意識するようになりました。
成塚
創業者の南場さんの話を聞いたり、メンターの方と話をしたりする中で、会社の方針と自分の考えが一致しているのを実感しました。
芳本
なるほど。「自分の考え」という言葉が出ましたが、自己分析はどのようにしてましたか?
成塚
これまでどのような選択をしてきたのかを振り返ることが大事だと考えました。例えば僕の場合は、なぜ宮城大学を選んで、クリエイティブチームを作ってきたのか。そういう選択をしてきた時、自分は何を大切にして、何を基準に選択をしてきたのか、みたいなところですかね。
芳本
なるほど。
成塚
過去の選択に目をやれば、これから先自分が選択していくことが最も自分に適しているんだということが分かると思うので。今までやってきた選択を洗いざらいもう1度調べ直すことが重要かと思います。
芳本
じゃあやっぱ過去を徹底的に遡って、自分がどういう意思決定をしてきたかっていうところを再度振り返るっていうところですよね。
成塚
そうですね。
芳本
じゃあ、自己分析を経てどのような未来を進もうと思いましたか?
成塚
やはり「課題解決のためのデザイン」がしたいと考えました。言葉じゃ通じないところを可視化するためのツールとしてデザインを使いたいと思いましたね。
インターンで評価されたこと・評価したこと
芳本
DeNAのメンターの方から評価してもらったポイントをお聞きできますか?
成塚
インターンが終わった後に担当の社員さんからもらった講評に「フィードバックをきちんと理解して吸収できている」というのがありました。
芳本
それは普段から意識してきたからこそ、できたことなのでしょうか?
成塚
うーん、、意識的にというかクセに近いんですよね。人の話をメモするのが好きなので、常に紙とペンを持っていました。だからそのフィードバックを頂いた時もずっとメモを取っていましたね。
芳本
なるほど。そういう習慣はいつ頃からついていたのですか?
成塚
中学生か高校生の頃からですかね。部活の顧問の先生から何かアドバイスをもらえばポケットから小さいメモとペンを取り出してメモするというのが習慣づいたのかもしれません。それを自分のものにしようっていう思いは昔からありましたね。
芳本
メモ力ですね。
DeNAに決めた理由
芳本
最後に詳しくDeNAに決めた理由を詳しくお聞かせ願えますか。
成塚
社員さんや社風に惹かれたというのとDeNAの企業理念に魅力を感じました。DeNAの企業理念の一つに「世界にデライトを届ける」というものがあるのですが、まずそれに惹かれました。
芳本
デライトとは?
成塚
「喜びや驚き」という意味です。デライトを届ける対象はお客さんはもちろん、社員も含めてなので。DeNAは社員が自分らしく働くことを全力でサポートしていると創業者の南場さんがおっしゃっていたので、それも魅力的に感じました。
芳本
全てのステークホルダーに対してということですね。すごく魅力的ですね。
成塚
あとはDeNAの「『こと』に向かう」という考え方がいいと思いました。物事の本質的な価値を忘れないという意味で。インターンでコンセプト設計に時間をかけたのもその考え方によるものです。
芳本
なるほど。DeNAの精神が凝縮されて設計されたインターンでしたね。
成塚
そうですね。何事もユーザーファーストで考えるというDeNAが自分には合っていると感じました。でもそんなこと言いつつも、他の会社ともかなり迷いました。その会社でインターンバイトさせてもらい、それが終わるまで返事を待ってもらいました。それで比較した結果、本質的な価値を大切にして、世界に驚きと喜びを届けたいという考えのDeNAを選んだという感じです。
芳本
なるほど、本当に素敵な考え方です。おそらくこの記事が出たら宮城大学の知名度が上がりそうですね(笑)
成塚
それで少しでも恩返しできたら嬉しいですね!
芳本
ありがとうございました!今後一層のご活躍を期待しています!
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