面接で短所を聞かれることは少なくありません。長所、つまり良い点以外も、面接では当然のように問われます。しかしながら、短所をそのまま伝えてしまって、逆にマイナス面だけ印象に残ることだってあります。「伝え方」が肝心です。
ここでは、そもそも面接でなぜ短所が聞かれるのか、短所を的確に答えるための準備から伝え方、注意点まで網羅して解説します。
なぜ面接で短所を聞かれるのか?
面接でなぜ短所が聞かれると思いますか?考えてみたことはありますか?面接で短所を聞く理由は、いろいろな観点から答えることが可能です。企業によって、短所を問う理由の角度は、多少異なります。ここでは、短所を聞かれる理由として、押さえるべき点を4点に集約しています。
1適性判断
1点目は、適性判断です。
面接では様々なことを聞かれ、掘り下げられます。あなた自身のこと、業界や企業に関わること。そして、そこから企業が求める人材かどうかを見極めようと、適性の判断を行います。募集の職種や社風などは、企業によって違うのは当然です。自社の雰囲気と合っていないければ、早期離職につながりかねません。
短所を聞くことで、想定の範囲内であり改善可能なのか、致命的な短所ではないのか適性の判断を下せます。
2自己理解能力の判断
2点目は、自己分析不足ではないかの判断を下します。
採用は、面接で主に長所やアピール点などを聞かれます。つまり、1点目の企業の評価基準、求めている人材に相応しいか、伸びしろや成長度の可能性を探ります。一方で、面接で短所を聞くことにより、その学生が将来、どれくらい成長するかの予測を立てられます。客観的に自己理解が出来ていれば、特に若いうちは克服して成長することができるかもしれません。
3ポジティブ思考
3点目は、ポジティブ思考を持ちあわせているかの判断です。
新卒はこれから会社に新しい風を吹き込んでくれますので、ポジティブ思考は欠かせません。若くてエネルギッシュな学生を入社させることで、企業もフレッシュさを実感します。「落ち込みやすい」「暗い」「マイナス思考」などはネガティブ要素が強過ぎます。新卒として雇うにたる人材か判断します。
短所だからこそ、前向きに捉えてアピールにつなげたいところです。
4短所の克服・修正能力
4点目は、短所の克服・修正能力の有無の判断です。
短所のない人間はいないと思います。しかしながら、面接はアピールの場というのが、強過ぎて「自分に短所はありません」と答えるのはいかがなものでしょうか?短所は言いたくないのが本音ですが、短所と向き合い、克服の努力ができる人間か、採用側は判断を下したいのです。
短所と真摯に向き合い克服する姿勢があれば、それを乗り越える人間性を垣間見ることができるでしょう。仕事でも、成長意欲をもって苦手な分野も克服してくれるかもしれません。
面接で短所を聞かれる前にやっておくべきこと
面接で短所を聞かれる理由がわかったところで、次にやっておかなければならないことをまとめてみました。以下の4点になります。とっさに「あなたの短所ですかと聞かれて」戸惑う学生も少なくありません。場当たり的な、問答にならないような準備が欠かせません。人間は長所もあれば、短所もあります。成功体験もあれば、失敗体験もあります。自分の良い部分だけでなく、悪い部分も認識し、整理しておきましょう。
1自己分析
就活もキャリア形成も、人生でさえも、結局は自己分析に始まり、自己分析に終わります。進路を決定する上で最も大切なのは自己分析なのです。
自分の人生は、自分でしか切り拓くしかないからです。自己分析を行うことで、今までの人生を振り返ってみましょう。どのような出来事があったのか、意識や思考、行動を思い返してみてください。必ず短所につながるエピソードがあります。
どんな自己分析から始めれば良いのか、「自己分析」という言葉は聞いたことがあるがやり方がわからないという方は、まず自分史の作成から始めてみましょう。自己分析で最もポピュラーな分析方法の一つです。以下の記事で詳しくご紹介していますので、こちらを参考にしてみてください。
2他己分析
自己分析に限界を感じたら、他人に自分の性格を引き出してもらうのも手です。いわゆる、他己分析というものです。
家族や友人、知人からはじめり、最後には初対面の人に第一印象を聞いてみて、答え合わせもしてみましょう。自分が認識している短所との整合性あるいは乖離した点など楽しみながら、他己分析してください。思わぬ発見があれば、勿怪の幸いです。
もちろん、家族や友人だけにとらわれる必要はありません。身近な人に相談しづらいという方は、就活相談サービスやOBOG訪問を他己分析に利用するのも立派な手段でしょう。
3短所を長所と合わせて考える
短所と長所は、鏡合わせのようなものです。もっと言ってしまえば、言葉の綾で、ニュアンスの違いでイメージがガラッと変わってしまいます。同じようなことを言っても、伝え方次第で、全く違う印象を与えることになります。短所は長所とセットで考えてみましょう。短所と長所は背中合わせですから、話にも説得力が生まれてきます。
短所と長所は表裏一体です。「短所」と「長所」は裏を返せば、どちらにもなりえます。「物は言いよう」とは、良く言ったものです。「協調性に自信がある」のは、「率先して物事を進める力がない」とも言えますし、「チャレンジ精神があり果敢に挑戦する」のは、「冷静に分析して、思慮深くない」とも言えます。常にセットで考えられると効率的です。
わかりやすく下記のように、表にしてみました。「長所」から「短所」を、「短所」から「長所」を導き出すことだって可能です。
短所 | 長所 |
独立心が強い | 主体性がある |
一方的 | 働きかける力がある |
計画性がない | 実行力がある |
考えすぎる | 課題発見力がある |
心配性 | 計画力がある |
現実味に欠ける | 創造力がある |
目立ちたがり屋 | 発信力がある |
受け身なところがある | 傾聴力がある |
優柔不断 | 柔軟性がある |
集中力に欠ける | 状況把握力がある |
マニュアル的 | 規律性がある |
緊張感が感じられない・感情が見えにくい | ストレスコントロール力がある |
今回は「社会人基礎力」の12の能力要素を参考にしましたが、それ以外でも、同じことが言えます。「リーダーシップ」⇔「我が強い」、「責任感がある」⇔「抱え込みやすい」など、長所と短所は表裏一体だと言うことがわかった思います。
4短所の原因分析、課題改善
短所で重要なことは、自己分析や他己分析で自己理解を深めることです。どれくらい自分という人間がわかっているのか、その理解度が肝心です。もちろんこれは長所においても同様です。
理解度が進んでいれば、原因の分析から課題を導き出し、改善策を考えます。さらに行動にうつすことが可能となるでしょう。面接官には、仕事の場面においても、同じようなプロセスを踏むだろうとイメージを喚起させられます。
結果はプロセスに左右されます。そこに至った経路がとても重要です。良い結果は、良いプロセスからしか生まれません。
面接での短所の答え方
面接での短所の伝え方は、大変重要です。短時間短期間で判断されてしまう面接では、短所をどのように伝えるかでイメージが変わってきます。短所の伝え方や話し方、内容によって、面接官に与える影響はまったく異なることでしょう。
1面接での短所の答え方(基本編)
面接で伝える短所は、努力でカバーできることが大前提です。
たとえば、「他人とまったく協力できないことです」と答えたとしたらどうでしょうか?まず、「まったく」と付け加える必要はありません。「まったく」という言葉のイメージが強過ぎます。これでは、「努力ではカバーできない」「努力して克服する成長意欲を感じない」などマイナス面が多すぎるでしょう。
また、「他人と協力しない」仕事はありません。どの業界、どの仕事でも、大なり小なり、人と協力する場面は出てきます。ここでは、「他人とコミュケーションを築くのに時間がかかります」程度に留めて答えましょう。さらに「しかしながら、他人の良い点を探して、歩み寄る努力は欠かしません」と付け加えられるかで印象も変わってきます。
2面接での短所を長所に変える答え方(応用編)
短所をプラスの言葉に変えてみるのもいいでしょう。
「できない」「ダメ」などはネガティブな要素が高く、できるだけ伝える際には避けたいところです。短所だからこそ、ポジティブな言葉で、前抜きに答えましょう。
例えば、「思慮深さにやや欠けるところが短所だと認識しております。考える前にすぐに、行動にうつしてしまいます。そのため、何ごとも一呼吸おいてから行動するように、自分に言い聞かせるようにしています」などと、短所を長所に変換しながら答える方法もあります。
3面接での短所を長所に変える答え方(回答例)
面接で短所を長所に変える方法としては、具体的なエピソードで根拠を提示できるようにしておきましょう。
結局、最後は理由が大切になってくるからです。短所を聞かれたら、まずは「結論」を簡潔に述べます。次に具体例、改善策を答えると完璧です。
「私の短所は、緊張しやすいところです。ゼミでは、月に1回個人発表があります。人前で話すのが苦手なため、逆にゼミ生が多いところを選択しました。この大学生活で少しでも苦手意識を払拭したいと思ったからです。担当教員から、緊張しないためには、準備に妥協しないことが大切だと教わりました。そのため、ゼミの発表に向けた準備では、事前の文献調査、資料作成、プレゼンの練習を入念に行っています。発表本番では、まだまだ緊張しますが、これだけやったんだという自信が湧き、いい意味での緊張感は保てています。」
面接で短所を答える際の注意点
面接での短所を話す際には、何も嘘をつく必要はありませんが、聞かれてもいないことをくどくど話す必要性はまったくありません。ここでは、短所を話す際の注意点を5点あげました。すべてをさらけ出し過ぎて、自分自身がマイナスにならないような工夫が必要です。
1短所がないはNG
短所を聞かれているのに「短所はありません」はNGワードです。そもそも短所のない人間などいないです。
もし、そうだと本当に思っているのであれば、採用者は「自己分析できていない」「客観的に自分が見えていない」と思うのが関の山です。短所と長所は表裏一体です。自己分析や他己分析をとおして、自己理解を深めておくことです。
2極端な短所はNG
極端な短所は避けてください。深刻過ぎて、改善が困難に思えてしまいます。「絶対無理」「まったくダメ」「全然できない」などを付けるのも極端です。
また、ミスマッチが起これば、選考は進みにくいでしょう。営業職志望なのに、「人と話すことが苦手です」と言い切るのはいかがなものでしょうか。事務職志望なのに「単純なミスを繰り返します」と言い切るのはいかがなものでしょうか。偏り過ぎた回答はミスマッチにつながります。
3致命的な短所
致命的な短所もあります。時間にルーズ、お金にルーズ、コミュニケーション能力がまったくない、嘘つき、太っている、不健康などです。
企業ではお金をもらって仕事をする立場です。そこには、責任感が伴います。人間なので、ミスはあって当然ですが、改善の余地がない致命的な短所は避けましょう。仮に時間的にルーズな人間だったとしても、これは努力で改善ができます。わざわざ、言葉に出していってしまうことは、社会人としてルールが守れないというレッテルを貼られてしまいます。
そういう場合は、自己理解を深めた中で、もう少し適切な言い回しもしくは、違う短所を答えた方が無難です。一旦、貼られたレッテルを短時間ではがすのは至難の技です。
4あざとい回答
面接官が聞いた際に、明らかに長所と思える回答は避けましょう。あざとい回答はときに、内定を遠ざけます。
また、たまに「短所の改善点は言わなくてけっこうです」と言われることもあります。その場合は、無理して改善点を言う必要はありません。言われたことに答えるだけでかまいません。
予定調和を嫌う面接官は、変化球を投げ込みます。同じストライクのボールでも投げ方を変えて、学生を戸惑わせようとします。しかし、焦る必要はありません。自己分析をしっかりしていれば、どんな球種がきても、打ち返せます。
5エピソードが古すぎる回答
短所でも、長所でも、聞き手がイメージできるエピソードを話します。しかしながら、それが古すぎたらどうでしょう?
イメージが湧きづらく、説得力に欠けます。余程のことがない限り、大学生のエピソードが適切です。高校生や中学生以下のエピソードになってしまうと、面接官は「それ本当に短所?」と懐疑的になりかねません。エピソードが古いので、すでに克服していると思うかもしれないからです。
まとめ
面接で短所を伝える際には、その伝え方次第で結果が大きく変わることにもなるでしょう。仕事や企業に直接デメリットがあることは避けて、努力次第で改善できることや、カバーできることを具体的に伝えてください。
面接で短所を聞く方も、別にマイナス面を掘り出して、えぐりたいわけではありません。とどのつまり、あなたのことを知りたいだけです。つまり、他の質問と遜色ありません。
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